まるで巨大イクラ!?タラコ?手で持てる不思議な「水のボール」の作り方

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-13-16-30-56

「水を手でつかむ」という体験をしたことはありますか?

昨日、科学部の生徒たちと一緒に作ったのが、このプルプルの「水のボール」です。まるでSF映画に出てくる未来の飲み水のようですが、実はこれ、身近な材料を使った化学実験なんです。

一般的には「Ooho(オオホ)」や「持ち運べる水」として知られていますが、その正体は巨大な人工イクラと言ったほうがイメージしやすいかもしれません。

今回、生徒のリクエストで赤く着色してみたところ、見た目は完全に巨大な明太子になってしまいました(笑)。爪で引っかくと中からドロっと水が出てくる感触は、何度やってもクセになります。今日は、ご家庭でも楽しめるこの不思議な「科学のレシピ」と、その裏にある「固まる仕組み」をご紹介します。

不思議な「水のボール」の科学レシピ

この実験の主役は、アルギン酸ナトリウム塩化カルシウムという2つの薬品です。名前だけ聞くと難しそうですが、実は食品添加物として私たちの生活を支えている安全な物質なんですよ。

用意するもの

アルギン酸ナトリウム(昆布やワカメのネバネバ成分です)

塩化カルシウム(豆腐を固めるニガリの親戚や、除湿剤に使われます)

ビーカーなどの容器、おたま、水槽(またはボウル)

作り方とコツ

① まずは「中身」を作ります。アルギン酸ナトリウム2g水200mlに溶かします。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-13-16-32-37

【プロのコツ】 アルギン酸ナトリウムは水に溶けにくく、ダマになりやすいのが難点です。ぬるま湯を使ったりして、根気よく溶かすのが成功のポイントです。今回は食紅で赤く色をつけておきました。

② 次に「固める水」を作ります。塩化カルシウム3g水800mlに入れてよく混ぜます(今回は水槽に入れました)。

③ ここが一番楽しい瞬間です! ①のネバネバした液体を、おたまですくい、②の液の中にそっと沈めるように入れます。

④ おたまから離れた液体が丸くなるように、水槽の中で優しく回転させたり転がしたりして、表面を固めていきます。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-13-16-31-42

数分待って表面がしっかり膜になれば完成です!簡単ですよね。

なぜ水が固まるの?科学の「膜」の秘密

なぜ、液体同士を混ぜただけなのに、薄い膜ができるのでしょうか?

これは化学反応によるゲル化という現象です。 アルギン酸ナトリウムは、海藻のネバネバ成分とお話ししましたが、水の中では鎖のように長い分子として漂っています。これをカルシウムがいっぱい入っているプールに入れると、カルシウムイオンが鎖と鎖の間に入り込んで、「架橋(かきょう)」という橋渡しをします。

イメージとしては、バラバラだった紐(ひも)を、カルシウムがホッチキスのようにパチパチと留めていき、頑丈な網(あみ)を作っていくような感じです。 この網が瞬時に表面にできるため、中の水を閉じ込めるカプセルになるのです。

この技術は「アルギン酸ビーズ」として、人工イクラだけでなく、最近では高級料理店でソースをボール状にする「分子ガストロノミー」という調理法や、プラスチックを使わないエコな水容器としても注目されています。

たった2つの粉から始まる、最先端の科学体験。 ぜひ、そのプルプルとした感触をご家庭でも確かめてみてくださいね。

お問い合わせ・ご依頼について

科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中

科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!